フランチャイズ・ガイドラインとは、本部と加盟者との取引において、本部のどのような行為が独占禁止法上の問題にあたるかを示し、独占禁止法違反となる行為を未然に防ぐために定められたガイドラインです。
公正取引委員会が定めている「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」に基づいて策定されました。
フランチャイズの加盟者は、通常の企業の本店と支店のような関係性に見えていながら、法律的には本部から独立した事業者です。そのため、フランチャイズ本部と加盟者との取引は、独占禁止法が適用されます。
法人フランチャイジー・メガフランチャイジーは、複数のFC加盟者との契約によって多角化経営を行っています。
フランチャイズ本部の詐欺的な勧誘や一方的なフランチャイズ契約によって加盟店オーナーが被害を被ると、生活を脅かされるほど深刻な問題になりかねません。それぞれのFC本部との契約において、フランチャイズ・ガイドラインに違反していないかを留意する必要があります。
フランチャイズ加盟者を募集する際、以下の行為は独禁法にふれる可能性があります。
FC本部側が加盟者の募集を行うに当たり、加盟希望者の適正な判断にとって重要な事項について十分な開示を行わない、または虚偽や誇大な開示を行う行為です。実際のフランチャイズよりも著しく優良である、有利であると誤認させて自社と取引するように不当に誘引した場合、独占禁止法上のぎまん的顧客誘引に該当します。
※参照元:公正取引委員会「独占禁止法:不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」 (https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/fukousei.html)
予想売上を提示する際、実際には達成できない、または達成が困難な額を提示してはいけません。ロイヤルティ算定方法に関して十分な説明を行わず、実際よりも低い金額であるかのように開示することも不当にあたります。
また、他のFC本部のシステム内容を客観的ではない基準で比較して、自社のほうが優れている有利であるように開示することもNGです。さらに、中途解約をする場合、高額な違約金が発生することを開示せずに誘引することもぎまん的顧客誘引にあたります。加盟希望者が取引条件を正しく理解できるよう、適切な情報開示が求められます。
加盟者側は、FC加盟にあたり相当額の初期投資が必要なこと、また、事業は経済動向や市場環境にも大きく依存することを留意した上でのぞまなくてはなりません。
事業継続を前提に加盟交渉が行われているかをしっかりと見定め、重要事項は書面を交付してもらい、内容を十分に確認してから検討するようにしましょう。
フランチャイズ契約を締結した後も、独禁法上問題となり得る行為は存在します。
取引上、優越した地位にあるFC本部が、加盟者に対して不利益な取引条件を設定すると、独禁法上の「優越的地位の濫用」に該当する可能性があります。
これらは、加盟者の本部に対する取引依存度や本部の市場における地位、加盟者の取引先変更の可能性、その他本部と取引することの必要性を示す具体的事実の要素を総合的に考慮して判断されます。
個別の契約条項や本部の行為が問題になるケース
取引先の制限 | 商品や原材料の注文先、店舗の清掃依頼先など、本部または本部の指定する事業者とのみ取引させる |
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仕入数量の強制 | 返品が認められないにもかかわらず仕入数量を指示する 加盟者の意思に反して加盟者名で仕入発注する |
見切り販売の制限 | 廃棄された商品の原価相当額が加盟者の負担となる仕組みの下で、正当な理由なく品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限する |
営業時間の短縮に係る協議拒絶 | 契約時に営業時間の短縮を認めたにもかかわらず、営業時間短縮の協議を一方的に拒絶する 営業時間短縮の協議をしないまま従前の営業時間を受け入れさせる |
事前の取決めに反するドミナント出店等 | ドミナント出店を行わないとの事前の取決めがあるにもかかわらず、加盟者の損益の悪化を招くドミナント出店を行う 損益の悪化を招くときには加盟者に支援すると事前の取決めがあるにもかかわらず一切の支援等を行わない |
契約締結後の契約内容の変更 | 当初のFC契約に規定されていない新規事業の導入によって、加盟者が得られる利益の範囲を超える費用の負担が発生するにもかかわらず、新規事業を導入しないと不利益な取り扱いをすると示唆する |
契約終了後の競業禁止 | 特定地域で成立している本部の商権維持のために、加盟者に供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域や期間、内容の競業禁止義務を課す |
フランチャイズ契約全体としてみて本部の取引方法に問題があるケース
取扱商品・販売方法の制限 | 本部の統一ブランド、またはイメージを維持するために必要範囲を超えて取扱商品や販売方法に統制を加える |
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一定の売上高の達成 | 義務的な売上高の達成を要求する 市場の実情を無視して過大な売上高を定め、その代金を一方的に徴収する |
加盟者の解約権 | 加盟者に契約の解約権を与えない 解約の場合に高額な違約金を課す |
契約期間 | 加盟者が投資を回収するに足りる期間を著しく超えた、または著しく下回る契約期間を定める |
※参照元:公正取引委員会「フランチャイズ・システムと独占禁止法(PDF)」 (https://jftc.go.jp/houdou/panfu_files/fcglpamph.pdfl)
FC本部がフランチャイズ契約に基づく営業ノウハウの供与に合わせて、加盟者に対し仕入先を指定する行為は、加盟者の数や本部のし上における地位や規模、加盟者間の競争に及ぼす効果や指定先の事業者間の競争に及ぼす効果によっては独占禁止法上の「抱き合わせ販売等」または「拘束条件付取引」に該当する可能性があります。
加盟者の販売価格について、必要に応じてFC本部が希望価格を提示することは許容されていますが、加盟者の販売価格を拘束することは独占禁止法上の「販売価格の制限」にあたり、問題となるおそれがあります。
また、売れ残り商品などを値引きして販売しなければならない場合などに加盟者の価格を制限することも、独禁法上の「再販売価格の拘束」に該当するため問題となる可能性が高いです。
※参照元:公正取引委員会「フランチャイズ・システムと独占禁止法(PDF)」 (https://jftc.go.jp/houdou/panfu_files/fcglpamph.pdfl)
【注釈】
※1 リユース経済新聞( https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_5804.php)
※2 厚生労働省( https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001099975.pdf)
日経コンパス( https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0901 )
※3 株式会社AZWAYによるネットアンケート『「2024年にチャレンジしたいこと」1位:健康・美容、2位:スキル取得・向上、3位:副業、4位:運動・筋トレ』
( https://azway.co.jp/media/challenges-2024/)