訪問マッサージとは、一般的に、高齢者層に向けた「訪問医療マッサージ」のことを指します。「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」といった国家資格者が高齢者の自宅や高齢者施設などを訪問し、症状の改善を目的として医療的マッサージを実施します。なお、この訪問医療マッサージは医療保険の対象です。
高齢化社会と言われるいま、訪問医療マッサージは、フランチャイズのなかでも高い注目を集めているビジネスのひとつです。
訪問マッサージのフランチャイズ開業は、独立開業に比べて初期費用のリスクが低く、運営ノウハウやサポートを受けられるため、初心者にもおすすめです。フランチャイズに加盟することで、集客や経営に関する課題も解決しやすくなります。
日本は今後、75歳以上人口がますます増加し、全体の高齢化率も上昇していくと推計されています。これに伴い、自宅で生活を続けながら介護や医療を受ける高齢者の数も増加し、地域包括ケアシステムの整備がいっそう重要になると考えられます。こうした背景のもと、外出が難しい高齢者に対して自宅や施設に出向いて施術を行う「訪問医療マッサージ」の需要は、今後さらに高まることが見込まれます。「令和6年版高齢社会白書」における高齢化の動向や社会的背景を踏まえた考察を紹介します。
日本の総人口は1億2,435万人、65歳以上人口は3,623万人で、高齢化率は29.1%に達しました。中でも75歳以上人口が2,008万人(総人口の16.1%)であり、65~74歳人口の1,615万人(13.0%)を上回っています。令和52(2070)年には総人口の約4人に1人が75歳以上になると推計されています。
75歳以上の高齢者は筋力の低下や関節痛、血行不良などに起因する不調を抱えやすく、外出が難しくなるケースも増えるでしょう。その結果、通院が困難な高齢者層が増えることで、自宅や施設へ専門家が訪問するサービスの必要性が一層高まると考えられます。
介護保険制度で要介護・要支援認定を受けている人は令和3年度で676.6万人となり、平成23年度の515.0万人から約161万人増えています。
要支援・要介護の認定率を見ると、75~84歳で18.3%(要支援6.2%+要介護12.1%)、85歳以上では58.8%(要支援13.9%+要介護44.9%)に上り、後期高齢者ほど介護ニーズが高いことが明確です。
高齢社会白書では、地域包括ケアシステムの整備が重要視されています。これは「可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるように支援する」という考え方を軸に、医療や介護、生活支援サービスを包括的に提供する仕組みです。
こうした政策の方向性により、病院や介護施設に行くことが難しくても自宅で必要なケアを受けられるサービスが重視されます。訪問医療マッサージは、まさに在宅ケアの一環として機能しやすいサービスといえます。
社会保障給付費は令和3年度で約138.7兆円となり、うち高齢者関係給付費が約83.4兆円(全体の60.1%)を占めます。
病院での長期入院や施設入居のコストを抑制するためにも、在宅でのリハビリやケアを推進する政策の方向は明確であり、訪問サービスの活用が期待されます。
令和4年現在、65歳以上の者がいる世帯は2,747万世帯で、全世帯の50.6%を占めます。さらに「65歳以上の一人暮らし」は男女ともに大幅に増え続ける傾向にあります。特に75歳以上のひとり暮らしでは、移動手段や通院サポートが得にくく、外出が難しくなるケースが多いです。
単身高齢者の場合、家族の送迎や付き添いが得にくいため、在宅にいながら医療・ケアを受けられる「訪問型サービス」に頼らざるをえません。訪問医療マッサージは、家族同居ではない高齢者層に対してもリハビリ的な支援を行える点で、今後いっそう求められると考えられます。
訪問医療マッサージは、医療保険が適用されるサービスです。そのため、同業他社間において価格競争が起こることはありません。激しい価格競争に疲弊することがないのは、メリットのひとつと言えるでしょう。
また、訪問マッサージはその名のとおり自宅や施設を訪問してサービスを提供するビジネスのため、店舗を用意する必要がありません。店舗を取得する費用や、毎月の賃料など店舗の維持にかかるランニングコストが要らないのは、経営にとって大きなプラス要素です。
さらに、リピーターを作りやすいのもメリットのひとつ。当然、満足してもらえるサービスを提供できることが前提ではありますが、基本的に定期的なマッサージを希望する人が多いため比較的リピーターを確保しやすいビジネスと言えます。
訪問医療マッサージのフランチャイズ開業にあたり、オーナー自身が何か資格を保有する必要はありませんが、実際にマッサージサービスを提供する施術者については国家資格が必要です。具体的には、「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」などが挙げられます。
これらの国家資格を持ったスタッフを事業規模に合わせて複数人雇用する必要があることは、頭に入れておかなければなりません。
訪問マッサージのフランチャイズ開業には、初期費用と維持費用がかかります。初期費用は加盟金や設備費用などが含まれ、維持費用にはロイヤリティや運営費用が含まれます。以下に詳しく説明します。
訪問マッサージのフランチャイズ開業において、初期費用は大きな出費となります。初期費用には、フランチャイズ加盟金、トレーニング費用、設備費用などが含まれます。加盟金はフランチャイズ本部への支払いであり、トレーニング費用はスタッフの研修に必要な経費です。設備費用には、マッサージベッドや移動用車両の購入費用が含まれます。これらの費用は一般的に50万円から300万円程度かかることが多いです。
フランチャイズ開業後には、毎月の維持費用が発生します。維持費用には、フランチャイズ本部へのロイヤリティ、広告宣伝費、事業運営費用などが含まれます。ロイヤリティは売上に応じて本部に支払うもので、一般的に売上の5%から10%程度が相場です。広告宣伝費は、地域での認知度向上や新規顧客獲得のために必要であり、月々数万円から数十万円かかることがあります。また、運営費用にはスタッフの給与や交通費、消耗品費などが含まれます。
訪問マッサージで成功するためには、フランチャイズ本部の選定が大切です。本部のサポート体制や実績、加盟店の口コミなどをしっかりと調査しましょう。次に、事前の市場調査を行い、ターゲット地域の需要や競合状況を把握し、開業するエリアを選定します。また、経営計画を立てる際には、初期費用や維持費用だけでなく、予想される収益も考慮し、無理のない計画を立てましょう。
スタッフの教育やマネジメントも成功の鍵となります。訪問マッサージのサービス品質を維持するために、スタッフの研修やモチベーション管理を怠らないようにしましょう。顧客対応やフォローアップも怠らないようにし、顧客満足度を高めるために、定期的なフォローやフィードバックを行って信頼関係を築くことが大切です。
【注釈】
※1 リユース経済新聞( https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_5804.php)
※2 厚生労働省( https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001099975.pdf)
日経コンパス( https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0901 )
※3 株式会社AZWAYによるネットアンケート『「2024年にチャレンジしたいこと」1位:健康・美容、2位:スキル取得・向上、3位:副業、4位:運動・筋トレ』
( https://azway.co.jp/media/challenges-2024/)